SPECIAL
特集
森のようちえん実施の裏側
ひの社会教育センターの活動のひとつに今年で11年目を迎える「森のようちえんコッコロ&森の冒険学校ぼびっと」という活動があります。4歳児~小学校2年生までの子どもたちが晴れの日も雨の日も雪の日も森で遊びます。
スタッフがいつも森の中に持っていくのはのこぎりとロープ。それ以外は森にあるものとその日に集まった子どもとスタッフの創造力で遊びます。
センターの森のようちえんは日野市周辺の公園4カ所を活動フィールドとしていて、使用する公園はどこも自然豊かです。それゆえ、様々なハプニングが起こることも・・・
今回はそんなハプニングから生まれたお話です。
昨年度の夏は森の中のいつもお弁当を食べている広場に、大きい立派な蜂の巣ができてしまったため、その公園へ行くことはしばらく控えていました。
冬になり動物たちの活動も不活性化してきたので、この公園での活動再チャレンジを試みスタッフが様子を確認しに下見へ。
危惧していた蜂やヘビなどは確認できなかったのですが、森に入る人が全体的に減ったからか、これまで草や木が生えていなかったところにもスクスクと草木が伸びていました。
昨年までは「ほびっとチーム(小学生1・2年生)」が挑戦している崖登りの崖も例外ではありませんでした。子どもたちからしたら絶好の遊び場でもあり自分の成長(去年より登れるようになったなど)を感じる場であった場所に小さな木が生え始めていました。
ひの社会教育センターでは数年前からLeave no trace(LNT)という考え方を導入しています。LNTとは地球と持続可能な関係を維持するためにできる人間の「行動倫理」です。
LNT7つの行動倫理とミニマムインパクトへの原則】
- ①事前に計画と準備をしよう(Plan ahead and prepare)
- ②影響の少ない場所での活動をこころがけよう
(Travel and camp on durable surfaces) - ③ゴミや排泄物は適切に処理しよう(Dispose of waste properly)
- ④見たものはそのままにしておこう(Leave what you find)
- ⑤たき火の影響は最小限にとどめよう(Minimize campfire impacts)
- ⑥野生動物を尊重しよう(Respect wildlife)
- ⑦他の利用者への配慮も心がけよう(Be considerate of other visitors)
下見へ行ったスタッフはその斜面を目の前に立ってふと、ここを従来どおり子どもたちの活動の場として使うか、ここに生えてきたこの植物たちを尊重したほうがいいのかという考えが巡りました。
(以下実際に考えた内容です)
・・・2つの考え方が出来そうだ。・・・
【1】まずは危険そうなものは切って(たとえばトゲがあるものなど)それ以外はかき分け踏み潰す形で崖に侵入。大人が先頭を進んで子どもがその後からついてくれば草も倒れて進みやすそう。いっそ冒険感が増してラッキーかもしれない。
【2】この遊び場は絶好の教育機会(子どもからしたら挑戦ができる場所)ではあるけれど、ここを使用することでこの崖に芽吹いた植物たちの命を無駄にしてしまうかもしれない。この場所の植生が安定するまで数年待つか他の遊び場を開拓するのもいい手なのではないか。
今回は、②の考え方を取ることにしました。
その考えの裏型にあったのは、LNTの7原則です。
特に
②影響の少ない場所での活動
④みたものはそのままに
という考え方に揺さぶられました。
地球規模から言えば生え始めの木や草の数本を犠牲にしても何も変わらないかもしれません。けれども、このLNTの考え方を基礎において物事を考えていくことで、自然と共生するような活動が創れていくのではないかと考え、まずは自分たちのできるところからの実践を心がけています。
とてもミニマムなことではありますが、小さなことからコツコツと。
身の回りから実践していくことできっと大きな力になるのでないかと考えています。
そして、子どもたちにも人も自然も大切にできる心を育んでいけたらという願いも込めて。
今回は、下見でのちょっとしたエピソードでした。ぜひみなさんもできるところから環境に優しいこと、LNTにチャレンジしてみてくださいね!